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アダムス方式と地方創生と中選挙区制をまるっと解説

time 2016/03/25

アダムス方式と地方創生と中選挙区制をまるっと解説

 有権者の一票は、地域によって重みが違う。
 いわゆる「一票の格差」が憲法違反と判断されたのはずいぶん前の話。
 ようやく、この民主主義の根幹に関わる問題が動き始めました。

 そこで登場したのは「アダムス方式」という言葉です。
 一票の格差是正の切り札的存在として、にわかに注目を集めています。
 ところが、自民党内からも反発の声があり、一筋縄ではいかなさそう。

 その理由は「地方の声が届かなくなる」のだとか。
 アダムス方式は、人口が集中する都市部の議席が増える方式です。
 でも、沖縄の基地問題や、東北の震災復興など地方にも重要課題はある。
 都市部出身の議員ばかりで、地方のことまで決めてもいいのか、と。

 そこで、一票の格差是正の別案として「中選挙区制の復活」を挙げる声も。
 現在の日本は「小選挙区制で1996年の衆院選から適用されています。
 それ以前は中選挙区制で、20年ぶりに復活させようというのです。

 民進党の誕生や、憲法改正など、熱い選挙イヤーとなりそうな今年。
 雑談でも選挙の話が出てくることは間違いありません。

 そこで、選挙制度改革にまで及ぶこの辺りのキーワードと関連性。
 まるっと「居酒屋トーク」レベルで解説していきます。

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アダムス方式は真新しい提案でもなんでもない?

 アダムス方式は、注目の的でさまざまなメディアで解説されています。
 なので、アダムス方式の詳説は他に譲ります。

 特徴を簡単にまとめると、以下の3つです。

 ・人口比に沿った議席配分とする。
 ・人口が少ないエリアでも1議席は保証される。
 ・うまくすると、議員定数削減ができる。

 基本原則は「人口比に沿う」なので、一票の格差是正にはもってこいです。
 ただ、今だって人口比に沿って議席配分はされています。
 それを、もっと進めていこうということです。

 そもそも、完全に人口比で割ってしまえば、一票の格差は僅かになります。
 例えば、日本人の10人に1人は東京都民です。
 だから、国会議員の10人に1人は、東京から選出されるのが筋です。
 現在は、小選挙区議席295に対して、東京の議席は25です。

 逆に、人口が最も少ない鳥取県民は、日本人の200人に1人。
 議席は1つが妥当であるところが、2議席となっています。
 次いで少ない島根も似たような人口比ながら2議席。
 せめて、鳥取と島根で合わせて3議席でもいいのでは?と思ってしまいます。

 ところが、「鳥取・島根」の合区を提案したら地元からは大反発。
 県が違えば文化も違うのに、中央は何もわかっとらん!というのです。
 これが、2015年春の話です。まだ1年前ですね。

 でも「一票の格差」は憲法違反と判断された大問題です。
 人口の少ない県の議席を減らさないことには格差は縮まりません。
 地方はそのままに、都市部の議席数を増やせば格差は解消します。
 でも、今の世論は「議員削減」であって議員増加なんてありえません。

 そんな「手詰まり」を解消させるには、脇から攻めるしかないのです。

アダムス方式に反対する自民議員は裏切り者?

 反対派の意見は「地方の声が届かなくなる」というものです。
 「地方の声」とは言いますが、要するに「少数派の声」ということです。
 多数決が前提の民主主義で、マイノリティの扱いは常に課題です。

 この問題を脇から攻めるキーワードは「地方創生」になります。
 地方創生は「地方のことは地方で決める」権限委譲が含まれています。

 今の日本の問題点は、中央集権に偏ってしまっていることです。
 これは悪いことではありません。
 戦後復興からの流れを考えれば、中央集権なのは当然の選択です。
 ただ、国が豊かになって合わなくなってきているのです。

 地方への権限移譲が進めば、反対派の問題は少なからず解消されます。
 「地方のことは地方で決める」が実現すれば、自分達で多くを決められます。
 地方から中央へ声を届ける必要がなくなってくるわけです。

 地方創生は現政権の看板政策のひとつでもあります。
 野党各党も「地方創生」という基本政策に反対を唱えてはいません。
 この流れに反対する自民議員がいれば、党内批判に当たる可能性も。
 アダムス方式は地方創生とセットで、受け入れられるはずなのです。

 とはいえ、例外はあります。
 沖縄の基地問題は国防ですから、国の管轄から外せません。
 震災復興も国が担当相を立てて対応しているから、国管轄です。
 どこまで権限委譲するかは、まだまだ議論が必要ではあります。

野党の本音は「中選挙区制の復活」にある?

 野党は「一票の格差」で厳しく政権を責め立てています。
 「鳥取・島根合区」案では、同時に「徳島・高知合区」も提案されました。
 しかし、野党は「格差がまだ大きい」と批判を続けているのです。
 この批判は妥当なもので、いつもの難癖のような批判とは違います。

 ただ、野党の本音は「中選挙区制の復活」にあると見られています。
 その理由は、その方が野党に有利だからです。

 中選挙区制は、ひとつの選挙区から複数人が当選する制度です。
 現在は、小選挙区制なので当選するには半数近い票数が必要になります。
 中選挙区制では、例えば4議席の選挙区なら25%で当選となります。
 実際には、20%前後が取れれば当確といったところです。

 このため、強固な票田がある候補は選挙で勝ちやすくなります。
 選挙区の5割は無理でも、2割が確保できれば勝てるのです。

 中選挙区の復活を推しているのは、社民党と共産党です。
 どちらも、一定数の支持者、「強固な票田」を有している政党です。
 そして、与党ですが公明党。
 公明党の「強固な票田」を改めて説明する必要もないでしょう。
 労組を支持団体に持つ民進党も、内心はどう思っていることやら。

 現在の小選挙区制は、デメリットがいろいろと挙げられています。
 争点となる政策の「賛成か反対か」の二元論の選挙戦になりやすい。
 幅広い支持を得るために、候補者の主張が似通ってしまい個性が出せない。
 何より、「死に票」が多くでてしまう。

 特に「死に票」は「一票の格差」と並ぶほどの大問題。
 得票率は政党比で6:4でも、議席数にすると8:2なんてことも。
 当選者以外に入れた票が、全部「死に票」になってしまうわけです。

 では、中選挙区制の復活の方が良い!と思うのは、まだ早いのです。

中選挙区制廃止の理由とは?

 1996年より前は、日本の選挙では中選挙区制が採用されていました。
 それが小選挙区制になった理由はいろいろとあります。
 少なくとも、表立った理由は「政治腐敗」を解消するためでした。

 中選挙区制は「強固な票田」があると絶対的に有利になります。
 そのため、候補者は「票田」を「強固な票田」にしようとがんばります。
 その行きつく先が、癒着であり政治腐敗です。

 中選挙区制では、大政党は同じ選挙区に複数の候補者を立てます。
 すると、個人ではなく党を支持する人は、有力な方に投票します。
 無名な方は、党名ではなく個人で票集めをする必要に迫られます。
 ますます「強固な票田」を得るために、躍起になっていくのです。

 党も複数候補を同時に当選させようとすれば、大変な労力です。
 一人だけに集中するより、2人同時を目指す方が難しいのです。
 そしてもちろん、労力だけでなく財力も費やされていきます。

 中選挙区制は政治腐敗しやすく、金の掛かるシステムなのです。
 「有利だから」という理由で中選挙区制に戻そうというのはどうでしょう。
 廃止された制度には、廃止されるだけの理由があるものです。

一票の格差は民主主義の根幹問題ではあるが・・・

 アダムス方式にしても、地方創生がセットでないと批判の声は絶えません。
 地方創生はまだまだ始まったばかりの印象で、先は長そうです。
 対して「一票の格差」は危急の問題で、タイミングが合いそうにありません。

 根本的に民主主義という制度の限界なのではないか?
 などと申しても、現実的に対応を迫られているわけで。
 民主主義に代わる制度を構築する方が、遥かに時間が掛かるのですから。

 人口減少となれば、ますます都市部への人口集中は加速するでしょう。
 時間が経てば、状況は悪化していくばかりになりそうです。
 大問題でありながら、明瞭な解決策は見当たらないのが一番の問題です。
 いっそ「憲法違反」だというなら、憲法改正する方が早いのでは?

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