ナレッジ ウォーカー 「時事散策」

トルコがロシア機撃墜 その背景に両国の対立あり?

time 2015/11/25

トルコがロシア機撃墜 その背景に両国の対立あり?

 トルコ軍機がシリア空爆に飛来したロシア機を撃墜した事件。
 互いの主張は食い違い、態度は硬化し、状況は一気に悪化しました。

 つい先日、トルコでG20が行われたばかり。
 そしてパリ同時多発テロにより、ロシアも含めた協力体制が組まれました。
 これでテロとの戦いに万全の態勢が整ったかに見えたところの撃墜事件です。

 なぜこのようなことが起こったのか?背景にあるのは?

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食い違う両国の主張、真実は闇の中?

 両国の主張は大きく食い違っています。
 ロシアはトルコの領空侵犯はしていないとしています。
 トルコは領空侵犯機に10回以上警告したが応答しなかったとしています。

 トルコは先月にもロシア機の領空侵犯があったことを発表しました。
 11月19日には「国境侵犯には交戦規定を適用する」と警告していました。
 そして11月24日に領空侵犯したロシア機を警告の後に撃墜したのです。

 撃墜されたロシア機はsu-24で50年前に正式採用された旧式機です。
 当時の計器はアナログで、改装されなければそのままのはず。
 アナログ計器に慣れないパイロットの誤操縦説も浮上しています。

 こうしてみると、ロシアに非があるように見えてきます。
 しかし、いずれにせよ真実が明らかになることはないでしょう。
 ただ、露土関係が悪化し、米露や欧露関係も悪化した事実が残るのみです。

 ただ、背景を追うとトルコに撃墜の理由があるのが見えてきます。

シリア内乱の「終わらせ方」で対立している?

 シリアは政府軍、反政府軍、テロリストの三つ巴で混迷を極めています。
 そこに加わるもう一つの要素は「クルド人」です。
 ロシアの目指す「終わらせ方」は、クルド人が重大な存在になります。

 クルド人は「穏健な反政府勢力」です。
 残念ながら、実質的には唯一の「穏健派勢力」となってしまいました。
 アラブ系反政府勢力は過激化し、テロリストに接近してしまったのです。

 これまで米国を中心に反政府勢力を支援してきました。
 しかし、テロ組織の標的となると自衛のためにテロ組織に接近します。
 背景には、支援は受けるも米国の傀儡は好まない反米気質があります。

 ロシアはクルド人勢力と現政権であるアサド政権の連携を進めます。
 両者が手を組めば、政府系勢力vsテロリストの構図となります。
 あとは政府系勢力を支援してテロリストを殲滅すれば「終わり」です。

 しかし、トルコはその「終わらせ方」には納得していません。

トルコはテロ組織を支援している?

 トルコはクルド人が勢力を伸ばすことには大反対です。
 なぜなら、クルド人は世界最大の「国家を持たない民族」だからです。
 彼らは中東各国におり、結集して独立国を樹立しようとしています。

 ロシアは、クルド人がアサド政権と組んで内乱を治めた見返りに、クルド人国家の樹立を認めており、アサド政権もそれを受け入れています。
 それが成れば、周辺国のクルド人は独立して合流する可能性が高いです。

 トルコにもクルド人地域があり、全人口の15%はクルド人です。
 シリアでクルド人国家が樹立するのは、トルコの国家分裂の危機なのです。

 そこでトルコはクルド人が勢力を伸ばすのを抑えようとします。
 クルド人勢力は「穏健派」なので表立っては叩くことができません。
 そこで、ISISなどのテロ組織を支援しクルド人と戦わせたのです。

 ロシアがトルコを「テロ支援国家」と批判するのはそのためです。
 ロシア主導の内乱終結案を邪魔するため、テロ支援をしているからです。
 ロシア機撃墜だけを指して「テロ支援国家」と呼ぶわけではありません。

米国はトルコ側に立つ?

 米国はロシアの空爆を「反政府組織を空爆している」と批難していました。
 しかし、反政府組織はクルド人勢力以外はテロ組織に接近しています。
 それを米国が知らないわけではありません。

 ロシアの「終わらせ方」はアサド政権を存続させテロ組織壊滅を図るもの。
 アサド政権を独裁者としてきた米国には、それは受け入れられません。
 また、シリアへの後の影響力を考えるとロシア主導にはさせたくない。

 では、選択肢としてテロ支援をしてきたトルコを支持するのか?
 政治的にどう転じるかは、非常に重要かつ高度な判断になるでしょう。
 しかし、露土間で軍事衝突になれば、トルコ側に立ちます。
 トルコは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国で軍事同盟関係にありますから。

 NATOの加盟国は欧州に北米まで含めた巨大軍事同盟です。
 もし軍事衝突になれば第三次世界大戦の幕開けとなるかも知れません。

複雑怪奇なシリア情勢の落とし所はあるのか?

 クルド人が「国家を持たない民族」となった背景には英仏があります。
 サイクス=ピコ条約により中東に国境が引かれました。
 民族も何も考えずに引かれた国境により、国を跨ぐ民族になったのです。

 ちなみに、サイクス=ピコ条約の破棄はISISのスローガンでもあります。
 中東の悲劇を招いた背景には英仏があります。

 また、イスラエルの存在もありそれを支援するのは米国です。
 イスラムは米国を嫌っているのも介入がうまくいかない一因です。

 今回のロシア機撃墜事件で、逆にロシア支持が広がるのであれば。
 中東にとっては一番幸せな「終わらせ方」なのかも知れません。

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