ナレッジ ウォーカー 「時事散策」

書店の「民主主義フェア」への批判に思うこと

time 2015/11/18

書店の「民主主義フェア」への批判に思うこと

 渋谷のジュンク堂書店が「民主主義フェア」を批判を受けて中止した件。
 いまだに波紋が広がっているという報道が続けられています。

 「民主主義本」の売れ行きは好調ながら、フェア開催に批判が上がる。
 書店の「主張」を快く思わない客がいることに神経質になる。

 そんな中、敢えて民主主義フェアを開催する書店も登場しているとのこと。
 「本はすべてが偏っている」
 「圧力に負けていては書店はやっていけない」

 思想弾圧と戦う闘士の様相を呈していますが、そんなに大きな問題なのか。
 少し掘り下げて考えてみます。

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書店は公正中立である必要があるのか?

 書店は書籍を売る店舗であり、その母体は営利企業です。
 公官庁の所管を受ける組織ではないし、公共性が求められるものでもない。
 そもそも、書店が公正中立であることは原則的に求められていません。

 では、現実問題としてはどうか。
 単純に「逆の場合」を想定してみればわかりやすいです。

 世の中には「嫌中本」「嫌韓本」という本があります。
 これがまた、非常に売れ行きが良いというのが昨今の状況となっています。
 「嫌中・嫌韓フェア」を催したとき、世間はどう動くのでしょうか。

 「若者向けの政治本フェア」として自民党議員の著書だけを並べたら。
 安倍政権を賞賛する著書だけを並べたら。

 少なくとも「民主主義フェア」を擁護している朝日新聞は擁護しないはず。
 結局は、客もメディアも自分達の主張に反するから批判しているに過ぎない。
 個人的思想に同調しない者を批判するというだけの行動でしかないのです。

 そんな客や外野を相手に、書店が「客観的な」公正中立を貫くことは不可能。
 そして、その必要もないと考えられます。

「店長のイチオシ」を真に受けるのか?

 ○○フェアというのは、その店が販売促進に注力している本が並びます。
 今売れている本をコーナーに集中して、目につきやすくすること。
 書店の主義主張というよりは、販売努力の側面が強いでしょう。

 似たものに「店長のイチオシ」があります。
 書店に限った話ではなく、あらゆる販売店で見かけるポップです。
 本当に店長のイチオシだとして、どういう意図の「イチオシ」なのか。

 書店でいえば、店長が読んで他の人にも勧めたいと思った本とも取れます。
 しかし、良い大人ならば「店長が売りたい本」と受け取るものでしょう。
 それを「売れないが売りたい本」だとは断定しません。
 少なくとも、受発注の関係で書店にダブついている本だとは読みとれます。

 それを「偏った本をイチオシする店長」と批判するのは的外れです。
 誤発注で安値で店頭に並べたお菓子と、次元は変わらないのですから。

書店に批判電話をする人達は「良い客」か?

 一歩踏み込んで、書店が経済原理ではなく主義主張でフェアをしたとします。
 それを批判する電話をわざわざ掛けてくる客は、うるさい客でしょうか。

 主義主張を前面に出す書店、それもある程度の偏りを自覚している。
 その書店のスタンスは「嫌なら来るな」ということでしょう。
 某テレビ局の「嫌なら見るな」のスタンスと一緒です。

 かつての客たちは、何も言わずに「二度と来店しない」のが普通でした。
 わざわざ、批判の意を表明するために電話を掛けたりはしませんでした。
 書店が変わったというよりは、客の意識が変わった面が大きくあります。

 ネットの普及によって、社会全体の双方向性が高まりました。
 その流れを汲んで、書店に対しても意思表示する客が現れたということです。
 書店側も、双方向性の高い社会に合わせた対応が求められてきます。

 書店にとって、批判であれ意思表示する客は悪い客でしょうか。
 黙って二度と来店しない客と比べて、どちらが良い客なのでしょうか。
 なぜ、多くの業種店舗に「お客様の声」を投稿する箱があるのでしょう。

 賛同もあれば批判もあるのは普通のことです。
 敏感に反応し過ぎるのは、書店が時代においついていないとも見れます。

そもそもが「書店」は時代遅れの業種?生き残るには…。

 全国的に「書店」の数が激減しているのは周知のことです。
 書籍の売り上げも下がっているのですから仕方がありません。
 書店が生き残りを掛けて、販売促進に力を入れるのは当然の流れです。

 書店激減の理由はいくつかあるでしょう。
 電子書籍の普及、若者の活字離れ、読書時間を奪ったスマホ。
 いずれも書店に否はありません。
 つまり、書店は生き残るのに何かを変えなければならないということ。

 新刊本は安売りができないルールがあります。
 値下げ競争で他店より優位を確保するのは書店ではできません。
 そうなると「書店の個性を出す」というのが違いを生む方法になります。

 個性の出し方にもいろいろとあります。
 ビレッジヴァンンガードのような本以外も並べる多角化路線もあります。
 敢えて「偏った」本を並べたり、イチオシするのもひとつの方法でしょう。

 書店は客からの賛同や批判を分析して「偏らせ方」を決めればいいのです。
 もちろん、昔の頑固店長さながらに、個人の思想信条を貫いてもいい。
 書店は自由競争の世界に踏み込んだと見ることはできないでしょうか。

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