ナレッジ ウォーカー 「時事散策」

トランプ氏の「もし民間人が銃を所持していたら」をまじめに考えると?

time 2015/11/16

トランプ氏の「もし民間人が銃を所持していたら」をまじめに考えると?

 過激な発言で注目を集めている米大統領選候補を狙うドナルド・トランプ氏。
 彼がパリ同時多発テロについて発言した内容が物議を醸しています。

 もし民間人が武器を所持していれば「事態は違っていただろう」とのこと。
 フランスには厳しい銃規制があり、民間人は銃を所持していません。
 この銃規制を批判した発言です。

 「もし民間人が銃を所持していたら」本当に事態は違っていたのか?
 毎度のトランプ氏の暴言で終わらせず、まじめに検討してみます。

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銃規制は憲法違反?護身の権利を侵害しているのか?

 銃器の所持が自由である国は少なくありません。
 米国が国家規模も所持率も最大ですが、他にもいくつかあります。
 例えば、スイスやフィンランドなども認められています。

 それぞれの国に歴史的な理由があります。
 米国の場合は西部開拓時代からの伝統的な考え方が根底にあります。

 米国での銃所持の考え方は「権利」です。
 銃規制は、自分の身を守ろうとする市民の権利を奪うものとされています。
 まず、根底にこの考え方があり、銃は護身の道具という認識です。

 この価値観からすれば、パリ同時多発テロの被害者は不幸だというわけです。
 銃規制のせいで護身の権利を奪われ、抵抗もできずに殺されたのだと。
 これが米国なら「銃規制は憲法違反だ」として問題視されるものです。

 銃規制が当然の国の人から見るとトランプ氏の発言は暴言ですが、「権利」を制限したがゆえの悲劇と考える人もいるわけです。

「事態」はどう違ったのだろうか?

 トランプ氏の銃規制に対する考え方はわかりました。
 では「事態は違っていただろう」とは、どんな違いを考えていたのでしょう。

 銃の所持は護身の権利ですから、権利行使を想定したのでしょう。
 テロリストが銃乱射を始めたら、護身のために市民は反撃に出るのです。
 つまり、警察が来て銃撃戦になる前に、テロリストと市民の銃撃戦になる。
 それが「違った事態」というわけです。

 市民がテロリストを射殺することで、被害を抑えられたかも知れない。
 訓練度の低い市民の銃撃による流れ弾で被害は拡大したかも知れない。
 いずれにせよ「黙って殺される不幸な市民」は減ったはずでしょう。

 このシミュレーションは現実味があるでしょうか?

 米国では日々、銃乱射事件が発生しています。
 米メディアの統計では、3年足らずで1000件の銃乱射事件がありました。
 「日々」というのは言葉のあやではありません。

 しかし、銃乱射を行う犯人に対し銃で反撃をした事例は極めて稀です。
 銃撃戦に至り、市民が犯人を射殺した例は皆無に近いです。
 まず、その場にいた人達は反撃するよりも逃げることを選択します。

 市民が銃を所持しており、テロリストが銃乱射を始めたとしましょう。
 銃の所持に関係なく市民は逃げ出すという方が現実味があるようです。

銃規制がなければ抑止力は高まったのか?

 市民が銃を所持することで「抑止効果」があるという主張もあります。
 トランプ氏は銃規制の厳しいシカゴでは犯罪率が高いと説明しました。
 犯罪者は弱者を狙うというのは、納得できる話です。
 市民が銃を所持すれば、弱者は減るので犯罪も減るというわけです。

 しかし、世の中はそうはなっていません。
 銃規制が厳しい国のナイフを使った犯罪が、銃による犯罪になるだけです。
 しかも、銃はナイフよりも遥かに凶器として質が高いのです。

 治安が良い国の上位国は、日本を含め銃規制のある国が多いです。
 銃所持が自由なスイスも、日本と同レベルに治安が良い国です。
 銃規制が治安の善し悪しに影響しない「道具」に過ぎないことがわかります。

 銃器の所持が自由であることと、犯罪の発生率は関係ないと言えます。
 もちろん、銃を使用した犯罪の発生率は大違いですけれど。

トランプ氏が大統領選候補を争っているということ

 トランプ氏の発言は自身の支持を高めたいという狙いがあるのでしょう。
 裏を返せば、この発言で支持者が増えることが見込めるということ。
 それが日本で物議を醸すのは、日米の価値観の相違というものです。

 戦後の日本は米国に占領されていた時期がありました。
 そのまま、米国の一州として併合されていたとしたら。
 日本州の人達も銃器を自由に所持することが許されたでしょう。

 そうであれば、銃乱射のテロリストを前にして逃げるか反撃するか。
 どちらを選ぶか迫られる機会が、あったかも知れません。
 この選択肢があることが米国の「自由」ということなのです。

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