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英中「黄金時代」を演出 英中に歴史問題はないのか?

time 2015/10/21

英中「黄金時代」を演出 英中に歴史問題はないのか?

 訪英中の中国・習近平主席は英中「黄金時代」を築けるかが注目されています。
 「黄金時代」は中国メディアによるとキャメロン英首相の発言によるもの。
 「英中関係で非常に重要な機会となる。両国の黄金時代とも言える」

 英国は対中輸出額を劇的に伸ばしており、今や経済の最重要国のひとつ。
 AIIBでも欧州で最初に参加表明し、欧州諸国の参加を呼び込みました。

 中国も「一帯一路」の終着点は英国だとし、両国の連携強化を強調。
 「陸と海のシルクロード」で巨大経済圏構想の両翼と持ち上げています。
 TPPという巨大経済圏に組せず、独自経済圏を模索する中国の切り札です。

 両国はすでに経済協力で蜜月関係を演出しており、国賓待遇の訪英です。
 相思相愛で習近平主席の訪英は始まる前から成功が約束されています。

 ところで、英中間には「歴史問題」はないのでしょうか。
 これが訪日だったら必ず触れる歴史認識へ釘を刺すところ。
 かつて中国を植民地化した英国へは、何も言わないのでしょうか。

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英国の代名詞「紅茶」が産んだアヘン戦争

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 英国といえば「紅茶」を思い浮かべる方も多いでしょう。
 18世紀には英国は清(中国)から大量の茶葉を買い付けていました。
 しかし英国の輸入過多で対清貿易は赤字が増える一方でした。

 そこで、なんと茶葉の代価に麻薬であるアヘンを売り出しました。
 アヘンは清でも英国でも輸入禁止です。
 なので、密貿易によってアヘンが大量に清に持ち込まれていきました。

 凋落激しい清は、アヘンの蔓延によってますます弱体化していきます。
 清政府は取り締まりを強化し、英国商人からアヘンを没収し、輸入しない旨の誓約書を書かせ、没収したアヘンは廃棄しました。そして、従わずに逃げる英国商人をマカオに包囲します。

 そこに駆け付けた英国東インド艦隊が、英国商人を保護を謳って開戦。
 英国の軍事力の前に清はなすすべなく敗れ、香港島を割譲します。

 アヘンという麻薬を密貿易で持ち込んで、それを規制されたら戦争。
 英国の理不尽極まる所業は、英国内でも批判の声が上がりました。

 しかし、アジアの地域覇権国である清を敗北させることは鎖国を続ける日韓などの開国を促す意味もあり、結局は「帝国主義的」国益が優先されました。
 現代で再現しようものなら、世界中から非難轟々の開戦理由です。

 ちなみに、日本は幕末ですが、清の敗北を受けて危機感が高まります。
 英国の脅威を見て攘夷派と開国派に分かれて、明治維新につながるのです。

英国の対清権益拡大のためにでっちあげのアロー戦争

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 アヘン戦争終結から14年後のことでした。
 アヘン戦争の影響で清では排外主義が広がり不穏な空気が漂っていました。
 日本でいうところの攘夷で、暴動や英国人殺害が起こりました。

 また、英国は清の賄賂が横行する旧態依然の徴税法に不満がありました。
 さらに、利便性を高めるためにもっと多くの港を開港させようとしました。

 これらの諸問題を一気に解決すべく、再度の武力行使を決定します。
 ただ、清の主権侵害に当たりますからそのままでは開戦理由になりません。
 そこで「アロー号事件」を無理やり開戦理由に仕立て上げます。

 アロー号はイギリス船籍を名乗る船で清が海賊行為を取り締まりました。
 これに英国は激しく抗議します。

 実際にはアロー号は元イギリス船籍で、事件当時は無国籍でした。
 清の検閲行為に違法性もまったくありませんでした。
 しかし、アロー号事件を理由に英国は開戦へと踏みきります。

 清はまたも圧倒的武力の前に敗北します。
 そして九竜島の割譲などさらなる植民地の提供を約束させられます。
 清が半植民地化は決定的となりました。

 ちなみに、このときロシアに外満州を割譲しロシアは軍港を建設。
 そこを拠点に極東進出を図ったために、日露戦争が勃発しました。

なぜ英中の過去の戦争は歴史問題にならないのか?

 アヘン戦争は麻薬の密輸入が原因となった戦争でした。
 当時の英国ではぎりぎり許容された行為のようですが、被害を受けた側は人道にもとる行為とは思えず許せるものではありません。
 アロー号事件も難癖をつけて開戦するなど英国の暴挙は明らかです。

 それでも中国の英国に対する歴史問題の話は聞いたことがありません。
 その理由のひとつは、清が満州で建国され中華を征服した王朝だからです。

 中国の大多数は漢民族で、清代は漢民族からすれば被征服期間でした。
 そのため、アヘン戦争でも清国内の反発は大きくなかったとされます。
 戦争地域は南部の一部地域でしかありませんでした。
 また、漢民族からすれば、支配者層の権力弱体化はむしろ歓迎でした。

 後の中華民国は清の継承国となっています。
 現在の中華人民共和国が中華民国(台湾政府)の継承国であるかは複雑な問題ですが、継承国として扱われているために疑問がわくのです。
 「満州族の国家と英国の戦争は我々に関係ない」ということでしょう。

中国の歴史問題は政治問題だとすれば?

 今でこそ英中関係は「黄金時代」と持て囃されています。
 今後は中国の欧州との連携は深みをましていくことでしょう。
 とはいえ、欧中関係は始まったばかりです。

 関係が悪化すれば「歴史問題」を持ち出す可能性も十分にあります。
 中国はその点、使えるものはなんでも使うでしょう。
 「植民地支配の賠償」カードはいずれ英中の大問題になるのかも。

 欧州がチャイナリスクを知るのはこれからですね。

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