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TPP大筋合意 「ISD条項」は主権を奪う危険な規則って本当?

time 2015/10/06

TPP大筋合意 「ISD条項」は主権を奪う危険な規則って本当?

 TPPの閣僚会合ですべての分野で決着し、大筋合意に達しました。
 甘利明TPP担当相は「TPPは全世界のスタンダードになる」とコメント。
 長きに渡る国家間調整の末に到達した合意点は、満足いくものなのでしょうか。

 すでに日本でもTPPの話でもちきりです。
 農産物、混合医療、著作権の期間、論点が山のようにあります。

 TPPの中身は時間を掛けて説明し、国民の理解を深めることが必要です。
 今は、感情的なデマのような情報ばかりが出回っている状況ですから。

 そこで、ひとつ悪名高きISD条項について掘り下げていきます。
 悪名高い理由は「国家の主権を奪う」とされていることです。
 この一見すると、国家存亡に関わるような条項は本当に悪法なのでしょうか?

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ISD条項ってそもそもなに?

 ISD条項とは企業や投資家に対して国家が協定違反を行った場合に、企業や投資家が受けた損害を賠償する手続きを定めた条項です。

 企業の協定違反は国家により制裁が可能ですが、国家が協定違反をした場合には企業には何ら手だしのしようがありません。そこで、国家による協定違反を賠償させ、協定違反の横行を抑止する必要があります。

 見てわかる通り、ISD条項はTPPに付随して誕生したものではありません。
 内容も、国家に対して弱者である企業を守るためのもの。

 これがなぜ「主権を奪う」悪法と断じる人達がいるのか。
 具体的な事例を挙げていきます。

アルゼンチンの事例:水道代値上げ禁止で賠償

 ダウンロード (2)

 アルゼンチンのブエノスアイレス州で水道事業の民営化がありました。
 落札したのは米国企業Azurix社のアルゼンチン子会社です。

 Azurix社は水道代の値上げを発表しますが、州は反対して値上げを禁止。
 これがISD条項に従い訴訟に発展します。
 結果、敗北したのはブエノスアイレス州です。

 これは市民のライフラインである水道料金の値上げに対し、行政機関のコントロールが効かなくなった事例となりました。

 ただ、背景には事業譲渡前に完了させるべき工事が未完だったり、その責任を企業に転嫁しようとしていたこともあり、その点が州側の契約不履行と判定された経緯があります。

ドイツの事例:脱原発で賠償

 ダウンロード (3)

 ドイツ政府は「脱原発」に転換したことは日本でもニュースになりました。
 その脱原発を、スウェーデンのファッテンファール社が訴えました。

 ファッテンファール社は大手電力会社で、ドイツの脱原発で多大な損害を被ったいうのです。具体的には、脱原発により原発が閉鎖に追い込まれたことです。

 ドイツ政府は脱原発のために、賠償金を支払いました。
 もし賠償金が払えなければ、脱原発はできなかったことになります。

 「脱原発」という国家方針が一企業により妨害される。
 これが、特に日本の脱原発派から「国家主権の侵害」とされています。

企業からみればISD条項がなければ泣き寝入り?

 2つの事例を見て、ISD条項は危険だと感じた方はいるでしょうか。

 企業からみれば、水道なり原発に多大な投資をしていました。
 しかし、回収する段階になったら国家や州に梯子を外されたわけです。
 これで賠償が取れなければ、投資額がまるまる損害です。

 自国内のインフラ事業者であれば、国家も補償を行います。
 自国経済や雇用とも直結することですから、当然のことです。

 それが、外国企業だから補償しなくて良いとはなりません。
 それが許されれば、国家はやり放題になってしまいますから。

 ISD条項は、国家と国外企業という今までは薄かった関係が、グローバル経済となり関係が強まる中で、正当な関係性を構築するために誕生したものです。

ISD条項は悪という風潮の原因は?

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 先のドイツの事例が大きな原因です。
 「脱原発」は日本でも大きな議題のひとつとなっています。
 「脱原発」の推進者には感情的な二元論者が多い傾向にあります。

 「脱原発」を妨害したファッテンファール社は悪で、ファッテンファール社の訴訟のベースとなったISD条項も悪だということです。まさに風評被害。

 協定違反を行った国家の責任問題であり、主権うんぬんの話ではありません。
 これからTPPの議論が深まるにつれ、日本でもISD条項の話が挙がるでしょう。

 一方からの視点のみに偏った主張には注意すべきです。
 特に、自身の主義主張に沿わないものはすべて悪というのは危険です。

 TPPでは感情的になるのはやめて、冷静に議論して欲しいですね。
 

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コメント

  • ISD条項で該当する企業というのは米国の企業がメイン。
    なぜなら国際条約であるTPPは憲法よりも上位であり
    裁判自体は英語でしかも米国で行うことになる。
    これは例えば日本の企業に対しても同じことが適応
    できるため
    訴訟を起こされただけで数億円というとんでもない額の費用がかかり
    倒産に追いやられるケースも出てくるはず。

    日本国が米国などの外資系企業にめちゃくちゃに
    狙い撃ちされるというもの。

    しかもTPPの条文は異例なまでに多く
    ページ数にして500枚以上。
    しかも全部英語
    日本語での表記は存在すらしていない。

    by 一般人 €2016年11月5日 08:09

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