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朴大統領「来年にも南北統一するかも」はありえない?② 壁を壊したらどうなる?

time 2015/08/19

朴大統領「来年にも南北統一するかも」はありえない?② 壁を壊したらどうなる?

 朴槿恵大統領が「来年に統一が実現することもあり得る」と発言。北朝鮮に何らかの急激な変化が起きる可能性が高いとみているのではないか、と憶測を呼んでいます。

 すっかり冷めてしまった「統一熱」、これを機に蘇るのでしょうか。

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 ⇒朴大統領「来年にも南北統一するかも」はありえない?① 朝鮮は壁を壊せるか?

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朴槿恵大統領の時代に統一なるか?

 北朝鮮では2011年に金正日が死去し三代目の金正恩が国家主席となりました。それから4年経ちますが北朝鮮は混乱から脱したとは言えません。若き首領と先代以前からの閣僚たち、この権力闘争はいまだ落ち着かず、有力者が粛清されたというニュースは度々聞こえてきます。

 もしも朴槿恵大統領の「来年にも南北統一」発言が何かしらの根拠を持っているのであれば、それは北朝鮮の体制崩壊であることは有力です。しかし、それは数年前からずっと騒がれていたことです。今更それを持ち出すならかなり有力な情報があったはずです。

 例えば、北朝鮮内でそれなりの勢力を持ったリーダーが北朝鮮からの独立を企図し、韓国側へ保護を求めてきたというパターンです。北朝鮮でそれなりの勢力といえば軍隊です。軍管区を任されるレベルの高官が寝返ったのであればあり得ない話ではありません。

 韓国側の主体的なアプローチによる統一という線であれば、中朝離反が考えられます。韓国がここ数年中国との経済連携を深めていることは周知の事実です。米国から訝しがられても中国寄りの姿勢を示すのが、その裏に中朝離反とそれを引き金にした朝鮮崩壊があるのであれば、朴槿恵大統領の歴史に残る大芝居です。実際、中朝関係は悪化しており、それでも北朝鮮の生命線は中国なのです。

統一したらどうなる?ドイツという先例は役に立つか?

 統一したら南北を合わせた人口は7300万人になります。北の食糧事情などを改善すれば人口増加は確実でしょうからゆくゆくは1億人の人口に達することもありえます。統一の混乱が数年で収まり、労働力や市場が拡大すれば統一朝鮮の国力はかなり高まることが予想されます。

 しかし、これは統一の混乱が数年で収まればの話です。ドイツでは1990年の統合から数年で混乱が収まりました。このドイツという先例に倣った統合が再現されれば問題ありません。
 という風にはいきません。

 既に北朝鮮と韓国の経済格差は1:20に及んでいると言われています。ドイツの統合時の東西の格差は1:3でした。圧倒的な経済格差は統合の障壁の高さを表しています。

 ドイツではベルリンの壁が崩壊し裕福な西側に多くの人々が流れ込みました。一時は労働力が高まり歓迎されましたが、あまりに多くの人が流れ込んだためにすぐに飽和しリストラが行われました。リストラされた西側の人々は「統合が悪い」とデモを起こしネオナチなどを生みました。しかし西側の高い経済力で東側の開発を進めると、故郷が開発されたことを知った元東側の人々は帰郷していったのです。これにより初期の混乱は収まります。

 この先例から学ぶことは、裕福な側に貧困な側を開発するだけの経済力が必要だということ。そして両国の経済力の差が大きいほど開発に掛かる経費は膨れ上がります。不満をなくすには裕福な側と同レベルまで貧困な側を開発しなければならないからです。それができなければ、裕福な側がレベルを下げるしかなくなります。しかし、それは不可能な選択でしょう。つまりはドイツの先例をなぞるなら膨大な金が必要になります。

妄想する統一から安定への流れ

 南北統一はきっかけはなんであれ北朝鮮内の内戦から始まるでしょう。北朝鮮は先軍政治で権力を握っている人はみな軍人です。そこで難民が南側へ流入してくるのが最初の現象です。韓国は同胞としてこれを保護します。そして治安維持や韓国へ助けを求める同胞の保護を理由に内乱に介入していきます。あるいは北朝鮮のいずれかの勢力が韓国との連携を画策して北側へ呼び込む形になるでしょう。

 この韓国の動きに米国は同調します。そして主役は韓国軍に譲りつつ核施設の確保を最優先に介入してきます。対する中国は批難はしても軍事介入まではしてきません。第二次朝鮮戦争をやる気はないでしょうし、北朝鮮の国体を維持するメリットは薄まったと感じているはずです。それよりは、統一朝鮮もバランス外交を取るでしょうから、それを中国側に取り込む政策を取ります。

 北朝鮮の内乱に介入する形であれば軍事衝突は短期間で収束します。統一朝鮮の誕生です。そして本当の統一はここから始まります。

 南へ流れ込んだ難民は職を求めて都市へ到達します。北朝鮮の労働力が安い賃金で使えたのは別の政体だったからで、統一朝鮮となれば北も南も同じ「最低給与水準」で雇用する必要があります。韓国の人口は5000万人、北朝鮮の人口は2300万人ですから、経済格差が20:1の状況では北のほとんどの人々は南を目指します。大量の失業者と難民が生まれます。社会保障は破綻して暴動が発生し治安レベルは低下、餓死者も大量に出ます。

 そこで難民の移動で空洞化した北側への開発事業が行われます。公共事業として難民や失業者を労働力とします。大量の資本が必要でしょうがここで中国が支援してきます。AIIB初の巨大プロジェクトは朝鮮北部の開発になるかも知れません。爆発的な開発によりドイツより時間は掛かるものの安定を取り戻す統一朝鮮。北部は中国との強い経済的な繋がりで、中国の影響力が強くなります。

 米国は統一朝鮮が成立し核施設も確保(核爆弾は完成していないとベスト)できれば朝鮮半島から米軍を撤退させます。こうして米国の影響力は薄れて、より中国寄りになった統一朝鮮が誕生します。

 こうしてみると悪くない妄想です。日本がどう関わるかは敢えて抜きましたが、国内の様々な勢力がありますので、本格的に朝鮮半島への影響力を高めようとはならないでしょう。せいぜい「支援」までです。但し、拉致被害者の安全確保に対しては確実に動きます。それが米韓軍への依頼になるのか、自ら乗り込むのかはちょっと予測できません。

朝鮮の南北統一による日本への影響は?

 日本の公式な立場では北朝鮮は国家として認めていません。朝鮮半島の正式国家は大韓民国だけとしています。そのため北朝鮮というのはあくまで地域名として用いているに過ぎません。但し、朝鮮半島北部を韓国の領土と認めているわけでもありません。韓国の国力が及ばない地としています。

 日朝国交正常化となれば北朝鮮を国家として認める必要もありますが、それには至っていません。この辺りは中国と台湾の関係のように曖昧決着にしている部分があり、その都度の都合に合わせています。政治の知恵というものです。

 つまりは日本は初めから朝鮮半島の国家は韓国のみとしているので、統一以前に分裂していないという立場です。韓国の支配域に朝鮮北部が含まれたという違いでしかありません。公式には。

 実際のところは、まず拉致被害者の安全確保のために動くはずです。統一の混乱の中で発見できなかった人達への調査隊の派遣など統一朝鮮と連携して行う最初の活動は拉致問題で間違いありません。他にも朝鮮動乱によるアジア経済危機の影響は受けます。

 統一朝鮮は韓国の後継国家、日本の認識では韓国の領土が広がっただけであれば、条約や契約はすべて継承されるので新たに条約を結び直す必要もありません。

 こうしてみると拉致問題は解決に向かって大きく動き出すのでメリットはあります。アジア経済危機は朝鮮統一がなくても中国バブル崩壊で発生し得るのでデメリットなしと考えれば、日本にとっては統一された方が良いかも知れません。

北朝鮮の崩壊なんて簡単には起きないという方へ

 如何でしょうか朝鮮の南北統一の歴史と未来予想。大きな視点で見ると、経済力(名目GDP)で世界2位の中国、3位の日本、13位の韓国と世界上位の経済大国に囲まれた北朝鮮。その真ん中で先軍政治というおよそ平和的ではない政体で周辺国と敵対しながら現在まで存続してきています。もちろん冷戦構造や中国の保護など北朝鮮単独で存続してきたわけではありませんが、この政体はこの先何十年も存続し続けるでしょうか?4代目、5代目の金某が「北の将軍様」として君臨し続けるのでしょうか。北朝鮮は「緩衝国」と言われますが、その意義は冷戦構造が崩壊した今も保たれているとは思いません。

 そう考えると北朝鮮の崩壊は歴史の必然であり、いつ起きても不思議はないことです。存在している方が不思議な政体ですから。朝鮮の南北統一はおいても、北朝鮮の崩壊の日は近いのではないでしょうか。

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