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70年談話(安倍談話)の結果 各国政府は賞賛、メディアは批判

time 2015/08/17

70年談話(安倍談話)の結果 各国政府は賞賛、メディアは批判

 安倍談話に対しての国内外の反応がだいたい出揃いました。
 共同通信が行った世論調査では「評価する」が44%、「評価しない」は37%で、世論は「評価する」の方が多いという結果になりました。

 野党は当然批判しています。
 特に、村山談話を発表した村山元首相は「引き継がれた印象はない」、アジア諸国に対して「村山談話とはだいぶ中身が違う名、という印象を与えると思う」と近隣諸国への影響も懸念していました。

 村山元首相の懸念は現実のものとなったのでしょうか?
 そして、 国内の反応は予想通りだったのでしょうか?

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中韓政府は実質容認、米英豪政府は歓迎

 近隣諸国と言って、一番に注目するのは中韓、そして米国の反応でしょう。
 ところが、反応は「政府」と「メディア」で温度差があるものとなりました。

 [中国政府]
  中国外務省は駐中国大使を呼び「中国の厳正な立場」を伝えました。
  直接の批判を避け「立場」を伝えるポーズで実質的に容認されました。

 [韓国政府]
  朴槿恵大統領は光復節の演説で「残念な部分が少なくない」と言及しました。
  続けて「新しい未来に共に進むべき時だ」とこちらも容認されました。

 最も反発することが予想された中韓ですが、トーンはかなり低めでした。
 というよりは、安倍談話で日本を攻撃する気はなく容認したようです。

 そしていち早く賞賛のコメントを出したのは米国でした。

 [米国]
  米国家安全保障会議のプライス報道官は「日本がもたらした苦難に対する痛切な反省、歴代内閣が出した談話を引き継ぐことを明確にした内容を歓迎する」という声明を出しました。
  戦争相手国の米国から賞賛されるのは大きな意味があると言えます。

 [英国]
  ハモンド外相は「70年以上にわたる日本の平和への貢献が継続することは喜ばしい」と声明を発表しました。また日本と近隣諸国の和解にプラスとなることを希望するなど、中韓に受入れを促すコメントも出しています。

 [豪州]
  アボット首相は「各国の苦痛を認識している」と歓迎する声明を発表しました。

 英国は豪州太平洋戦争の南方戦線で日本と対峙した直接の相手です。
 当時の東南アジアは英国、仏国、蘭国の3国がほぼすべてを植民地としていましたが、仏国と蘭国は太平洋戦争に先立つヨーロッパ戦線で早々にドイツ軍の影響下に置かれます。そのため、仏軍・蘭軍と日本軍との衝突はほとんどありませんでした。

 米国を含めて太平洋戦争の直接的な交戦国が安倍談話を歓迎しています。
 交戦国に中国も含まれますが、歓迎とまで行かずとも実質的に容認。これまでの中国の反日姿勢からすれば考えられない反応です。
 安倍談話の近隣諸国への効果は抜群だったとみて間違いありません。

政府は容認するもメディアは批判ばかり?

 ところが、各国メディアの反応は政府の反応とは異なります。

 [中国メディア]
  環球時報は社説で「台湾、韓国、中国」の並列について「一つの中国の原則に深刻に違反する」としました。

 [韓国メディア]
  韓国主要紙は「直接のお詫びがなかった」などと批判的に報じ「対韓関係にはそれほど重きを置いていないことが分かる」と断じました。

 環球時報は中国共産党機関紙ですから政府筋と言っても過言ではありません。そのため批判も「台湾問題」と脇道に逸れています。談話の内容ではなく文字面についての批判です。
 それに対して韓国主要紙は通常通りの日本批判を繰り広げています。ただ、結論として日韓関係の悪化に利するところはないという論調となり、政府の思惑と一致しています。

 [米国メディア]
  ウォール・ストリート・ジャーナルは「安倍首相自身の言葉による率直な謝罪は避けた」と批判的な一方で、ワシントン・ポストは「融和的な内容だった」と一定の評価をしました。

 [英国メディア]
  タイムズは「恥ずべきほどなまでに日本の罪ときちんと向き合わなかった」と社説で論評しました。

 外国の新聞社にも日本に対して右派と左派があります。
 有名なのはNYタイムズですが、今回辛辣な論評をした英紙タイムズも過去に日本の左派に迎合する記事を書いている新聞です。いわく「靖国に替わる戦没者追悼施設を作るべき」「南京大虐殺の死亡者数を少なく見積もっている」などなど。

各国政府は好評価、メディアは批判の意味は?

 中韓が大きくトーンダウンしたのは安倍談話が非常に良いものであったからに他なりません。「良いもの」というのは中韓の意に沿っているということでなく「批判しずらい」という意味です。過去の内閣の立場を継承することを明言しているので「現状維持」であり、注目されたキーワードもすべて含まれていました。その上骨子である「未来志向」は日中・日韓の外交の場では何度となく繰り返されるフレーズです。

 しかし、それ以上に大きいのは国内事情でしょう。

 中国は上海市場の暴落で発生した金融危機はまだ収束していません。中国は国民の多くが個人投資を行っており株暴落が庶民に与える影響は日本の比ではありません。つまり不満が高まっている状態です。中国は不満が高まるとガス抜きに反日を煽るという政策を行ってきました。しかし、中国に経済的な影響を与えることができるアジアの国は日本しかありません。「反日カード」は使えない中で安倍談話は発表されたのです。直前に発生した「天津爆発」も少なからず影響しているでしょう。現時点で被害者は200人超とされていますが、とてもその程度の被害とは思えません。実数が公表されることはないかも知れませんが、数千人に及んでいる可能性もあるでしょう。とても反日を煽る余裕はありません。

 韓国は冷え切った日韓関係の改善を模索しています。朴槿恵大統領の就任以来ずっと反日路線を突き進んできましたが、急激な円安や中国株暴落を受けて韓国経済は危険な状態になっています。そこで反日を煽る側の主要機関紙が「日韓関係改善」を提言し始め、大統領側もその路線に舵切りすることにした段階です。ところが朴槿恵大統領の妹が「親日発言」をしたために世論は激昂してまた反日気運が高まりつつありました。韓国政府としては安倍談話で一気に反日ムードを沸騰させることは愚策であり、なるべくソフトランディングさせて日韓関係改善への道筋を立てたいところでしょう。
 日韓関係が最も冷え切った状態こそ、韓国の反日が収まるということは記憶しておくべきでしょう。

 こうしてみると中韓相手には非常に良いタイミングだったと言えます。
 中韓政府は日本政府との関係を悪化させることは得策ではありません。
 しかし国民には掌を返して「賞賛」する姿など見せられません。
 そこで「批判」は政府ではなくメディアにさせるという構図でしょう。

安倍首相が一番評価して欲しかった部分は?

 戦後レジームからの脱却を目指す安倍首相は未来志向の談話を発表しました。
 その中で一番評価して欲しかった部分は、「お詫び」「反省」や「談話の継承」だったのかといえばそうではないでしょう。「積極的平和主義」こそが一番評価して欲しかった部分だと思います。

 「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」という下りが日本国民向けに伝えたい一番の部分であったのではないかと思います。

 昨今の嫌韓や嫌中の根本は「戦争と関係ない世代」が「未来永劫、謝罪を続けるべき」という中韓の姿勢に対する反発が大きい部分を占めているからです。この談話が不毛な謝罪要求の終わりとなり真の日中韓友好の一歩になって欲しいと願わずにはいられません。

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