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【安保法制】手榴弾は「武器」ではなく「弾薬」は正しいか?

time 2015/08/05

【安保法制】手榴弾は「武器」ではなく「弾薬」は正しいか?

 安保法制の議論で「武器」と「弾薬」の定義が問題になりました。
 安保法制が成立すると、自衛隊は「武器には含まれない弾薬の提供」が
可能となることから、「弾薬」とは何かという質問が相次ぎました。

 中谷防衛大臣は「武器と弾薬の区別とは?」という質問に対し、
「武器とともに用いられる消耗品」と回答しました。
 手榴弾やミサイルも「弾薬」に該当する認識を示しました。

 「弾薬」の定義は正しいと言えるものでしょうか?

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質疑の中で「弾薬」とされた具体的な兵器

 社民党の福島氏と共産党の井上氏の質疑で、具体的に登場したのは4つです。

  ・クラスター爆弾
  ・劣化ウラン弾
  ・ミサイル
  ・手榴弾

 これらはすべて「弾薬」であるという認識を中谷防衛大臣は示しました。
 これらを自衛隊が輸送する姿というのは確かに違和感があります。

 しかし、法律を感情で運用しては法治国家とは言えません。
 「弾薬」の定義を個別の兵器ごとに判断したのでは新兵器に対応できません。
 その境界線が「武器とともに用いられる消耗品」なわけです。

「武器とともに用いられる消耗品」は的確な定義か?

 一般的に「弾薬」として想像するのは銃器の弾丸のことでしょう。
 正確には弾丸と火薬と薬莢が揃って「弾薬」になります。

 歴史を紐解けば銃器と爆弾やミサイルは同系の兵器です。

 一般に爆薬の力で弾丸を飛ばす物を銃器と呼びます。
 爆薬に発火装置を取り付けた兵器が爆弾です。
 爆弾に推進装置と誘導装置が付くとミサイルになります。

 クラスター爆弾や劣化ウラン弾は、分類として「弾薬」に違和感なしです。
 では、ミサイルはというと爆弾に付随装置があるだけなのです。
 手榴弾は人力で投射する爆弾のことです。

 「消耗品」という表現はざっくりしていますが、概ね適切だと思います。
 細かく説明しても理解されないので、わかりやすく表現したのでしょう。

それでも「手榴弾」は違和感がある?

 メディアの見出しでも「手榴弾は武器ではなく弾薬」とするものがあります。
 手榴弾は人力で投射するもの、「直接攻撃」だから違和感があるのでしょう。
 「直接攻撃」は刀や槍と同じで、それは武器ではないかと。

 しかし、手榴弾は爆弾であり、爆弾は「弾薬」とするのが一般的です。
 爆弾の射出方法はいくつもあります。

 大砲から射出する爆弾は「榴弾」といいます。
 古くはカタパルトから射出され城壁を超えて攻撃したものもあります。
 現代では、航空機から投下するものを「爆弾」と呼ぶことが多いです。

 結局は爆弾であり、それをどう投射するかという違いでしかありません。
 もしも、「手榴弾は武器」で「榴弾は弾薬」とするのであれば、手榴弾として
も使えるし榴弾としても使える爆弾は、武器なのか弾薬なのか。
 実際、十年式手榴弾というものがありました。

歴史から学ぶべきこと

 黒色火薬は中国で発明されました。
 銃器は中国で発展し、欧州に伝わり、日本へと伝播しました。
 ポルトガルが銃器を発明したわけではありません。

 初期の銃器は「飛発」で8世紀末頃です。
 これは筒に火薬と石玉を入れ、火薬に点火して発射していました。
 最初期の「大砲」といって良いでしょう。

 10世紀には火炎放射機の原型とも言われる「火槍」が。
 元寇でも使われたロケット弾「火箭」や導火線着火式の「震天雷」
 ミサイルの原型と言われる「神火飛鴉」に多段式ロケット砲の「火龍出水」

 当時の火薬は性能が悪く、殺傷目的より威嚇目的として使われました。
 すでに銃器も爆弾もミサイルも多段式ロケット砲まで存在していたのです。

 彼らが着火方法や、射出方法を試行錯誤したことは間違いありません。
 それは欧州や日本に伝播した後も続けられたことは周知の通りです。
 その研鑽の末に、現代の銃器や爆弾が存在しているわけです。

 古代中国人が「火箭」は良いが「神火飛鴉」はダメと争っている姿。
 それが現代日本の姿だということです。

戦争を止めたければ戦争を知る必要がある

 質問で登場したクラスター爆弾は、日本は禁止条約を締結しています。
 米国は非加盟ですので、輸送を求められる可能性はゼロではありません。

 劣化ウラン弾は「汚い爆弾」として二次被害が議論になっています。
 日本では特に放射線被害がクローズアップされています。

 しかし、それを以て自衛隊が輸送すべきでないとするのはどうでしょう。
 理論的ではない感情論になってしまっていると思います。

 クラスター爆弾の禁止条約に「輸送」を禁じる条項はありません。
 締約国が開発、生産、貯蔵、委譲、使用、などをすることを禁止しています。
 慎重な判断が必要なのは確かですが、国会で即答する内容ではないでしょう。

 劣化ウラン弾は貫通力の高さを特徴とした弾丸です。
 同じ特徴を持つ弾丸としては、タングステン弾が一般的です。
 タングステンは、発がん性があることがわかっています。
 劣化ウラン弾を排除しても、代わりは「きれいな爆弾」ではありません。

 結局は日本人の「放射能嫌い」を利用したイメージ戦略だということです。
 自衛隊の安全だとかは関係なく、政局を見据えた質問です。
 戦争を本気で止めたいなら、もっと戦争や軍事の知識を持つべきです。

 とはいえ、福島氏といえばかつて「B52が艦船から飛び立ち攻撃をする」と
言った人ですから、勉強不足というレベルではありませんね。

B52を空母に乗せた想像図

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